岡山県きっての銘醸蔵、嘉美心酒造は1913年創業。
瀬戸内海に面した、温暖で風光明媚な港町・岡山県浅口市寄島で100年以上にわたり「米旨口」を軸にした酒造りに邁進しています。

5代目藤井進彦(のぶひこ)社長の願いは、地元は勿論、日本全国、そして海外にも自慢の銘酒を楽しんでもらうこと。世界各地を飛び回り多忙な毎日を送る藤井社長にお話を伺いました。

最高峰の品評会「IWC」でのトロフィー受賞を機に、世界へ本格進出

<凛々しい紋付袴姿でIWC授賞式(ロンドン)に臨む藤井社長>

― 日本酒の酒蔵は地元志向の方も少なくありませんが、藤井さんが海外へと目を向けたきっかけは何だったのですか?

― 2009年に、イギリスで開催される世界有数の審査会・IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で、「嘉美心 秘宝 本醸造」がトロフィーを受賞したことですね。
嘉美心のテーマは「食中酒としての日本酒」。米が本来持つ「香り」と「旨味」にこだわり抜いてきた姿勢と品質が高く評価されたことは、大いに自信となりました。

― ロンドンでの表彰式にも出席されたそうですね。

― はい、生まれて初めて「紋付袴」(日本男性の第一礼装)を着ました。会場では、日本酒が世界で注目され始めているということを強く実感し、日本酒と日本酒文化をしっかり伝えていこうと心に誓いました。

まずはアジアへ、そして欧米へと輸出を拡大

― 特に力を入れているエリアはどこですか

― まず挑戦したのはアジア圏ですね。香港やシンガポールでは嘉美心ならではの甘い味わいが受け、確かな手応えを感じました。現在は北米や欧州も含め18か国に輸出しています。

― 中国市場も重視していらっしゃいますよね

― はい、北京、上海、広州、杭州、深圳、天津など各地を飛び回っていました。
コロナ禍の間は行けなくて残念でしたが、2024年秋には久々に上海と青島を訪れることができ嬉しかったですね。
上海のイベントは大盛況で、来場者が写真を続々とSNSにアップしていましたよ。

縁起の良い「桃」酵母を使った甘口酒が中国で評判に

― 嘉美心のお酒で、中国で特に人気のあるものは何ですか?

― 無濾過生原酒「冬の月」と、白桃をたっぷり使った「和風リキュールmomo」ですね。
どちらも岡山県の名産・白桃から採取した酵母を使っており、上品な甘みが心地良いと評判です。
桃は中国では不老長寿や幸運など縁起の良い果実ということも、人気を後押ししているようです。


― 嘉美心のお酒によく合う、お勧めの中華料理はありますか?

― 辛い料理以外ならOKです。特にお勧めは煮魚など海鮮系。脂っこい味つけにもピッタリですよ。幅広い料理に合うので、家族など大人数で食卓を囲みながら嘉美心を味わって欲しいですね。

― では最後に世界に伝えたい「嘉美心の魅力」を聞かせて下さい

― 「口に入れるまでが酒造り」をモットーとしているので、安心・安全性に絶大な自信を持っています。
日本の伝統的酒造りは2024年にユネスコ無形文化遺産に登録され、ますます注目度が高まっているので、今後も日本代表として嘉美心の美味しさは勿論、日本酒文化の奥深さを発信していくつもりです。

<中国語版公開日>2025年4月
<記事制作>美酒企画代表取締役 柴田亜矢子