
滝沢本店が蔵を構えるのは、“日本有数のパワースポット”成田山新勝寺の表参道。
参拝者は年間約1,000万人にのぼり、外国人観光客からの人気も絶大です。
1872年創業の老舗を率いる滝澤直樹社長にお会いし、お話を伺ってまいりました。
■パソコン通信で知り合った酒蔵の娘と結婚し、飲む側から造る側へ
― まずは滝澤さんのご経歴について教えて下さい。
― 私は岡山県生まれで、大学は東京理科大学理工学部。卒業後はシステムエンジニアとして働いていました。
― 畑違いから酒造りの世界に入ったのですね。そのきっかけは?
― 滝沢本店の社長の娘と結婚したことです。まだSNSがなかった1990年代に、パソコン通信の日本酒好きが集まるフォーラムで知り合ったんですよ。
― 日本酒を一緒に飲むことで愛を育んだんですね!
― はい!結婚後もシステムエンジニアの仕事を続けていたのですが、2005年に思い切って滝沢本店に入社しました。
■栗のような香りが心地良い、麹造りの幸せ

― 全くの異業種への転身は、ご苦労も多かったのでは?
― 日本酒を色々飲んではいたものの、造りの知識はゼロでしたからね。まずは販売部門で配送や倉庫係をやっていました。その後、醸造試験所(現・酒類総合研究所)で50日ほど研修を受け、製造にも深く関わるようになりました。
― 酒造りで大変なことは何ですか?
― 酒造りは主に冬に行うので寒いことと、朝がすごく早いことですね。
― 特にお好きな仕事はありますか?
― 麹造りですね。麹室は暖かいし、麹が出来上がってくると栗のような良い香りがするので、とても幸せな気持ちになれるんですよ。
■「純米大吟醸 長命泉」は国際線ビジネスクラスで採用

― 滝沢本店では、主にどんなタイプのお酒を造っているのですか?
― もともとはスッキリしたドライなものが主流だったのですが、自分は甘くしっかりした味わいが好きなので、岡山県産の酒米「雄町」を使い、好みの酒を造り始めました。
― 雄町は、濃醇な味わいになる高級米ですね。シフトチェンジに対し社内で反対はされませんでした?
― 当時の社長に怒られましたが、人気が出てきたのでOKでした(笑)。
― 滝澤社長イチオシの商品は何ですか?
― 「純米大吟醸 長命泉」ですね。フルーティで繊細な吟醸香が特徴で、ANA国際線のビジネスクラスでも採用されました。
■成田国際空港からのアクセスは抜群、売店では試飲も人気

― 経営をしながら製造も担うのはさぞ激務でしょうね。
― 社員にはあまり時間外労働をさせたくないので、休日や朝の準備は自分でやっており体力勝負ですね。でも杜氏(製造責任者)見習いも順調に育っているので心強いです。
― 土地柄、外国人観光客の方も多いと思います。インバウンドの皆さんに向けてメッセージをお願いできますか?
― 滝沢本店はJR成田駅から徒歩五分。売店では試飲コーナーも充実しているので、是非色々な種類を飲み比べて欲しいですね。成田駅から成田国際空港へは電車で十数分なので、お土産をたくさん買っても楽ですよ(笑)。
【取材を終えて】
日本酒の蔵元と言えば東京農業大学出身者が多いですが、滝澤社長が学ばれたのは東京理科大学理工学部。IT業界から転身した、異色の経歴の持ち主です。
奥さまと知り合ったのは、パソコン通信の日本酒好きが集まるフォーラムというのも興味深いお話でした。オフ会で一緒に美味しい日本酒を味わうことで絆を深め、ついにゴールイン。インタビューでは奥さまも同席いただきましたが、仲良しで素敵なご夫婦だな~とお会いするたびにほっこりします。
滝沢本店は、成田山表参道唯一の酒蔵。表参道では、うなぎ料理屋さんをはじめ多種多彩な飲食店が訪れる皆さんをお迎えしています。成田のお不動さまで開運・運気アップのパワーを注入し、うなぎを頬張りながら「長命泉」で一杯やれば、人生がさらに充実すること間違いなしですよ♪
<中国語版公開日>2025年2月
<記事制作>美酒企画代表取締役 柴田亜矢子