はつもみぢで製造部門トップとして指揮を執るのは、阿部美恵さん。
育児に励みながら、まだまだ数少ない女性杜氏として活躍する阿部さんにお話を伺いました!

■はつもみぢとの出会いはハローワーク!未経験から酒造業界へ

― まずは、入社のきっかけについて教えて下さい。

― 私は元々飲食店に長く勤務していたのですが夜の出勤も多く、出産後は続けるのが難しくなりました。新しい仕事を探していた時にハローワーク(公共職業安定所)で見つけたのが、はつもみぢでの酒造りの求人情報です。

― 酒造りはかなりの重労働ですが、不安はなかったですか?

― 体力には自信があったし、何より面白そうだと思って就職を決めました。酒造経験がなく覚えることばかりで大変でしたが、丁寧に教えてくれたのでありがたかったですね。
テキストや講習会も積極的に活用し、どんどん知識と技術を習得していきました。

■山口県内4人目の女性杜氏の誕生

― 努力が実り、ついには杜氏(酒造りの最高責任者)にまで上りつめたのですね!

― 2年ほど副杜氏を努めた後、杜氏をやらないかと打診されたのですが、責任の重大さから悩んでいました。決断の契機となったのが山口県新酒鑑評会で最優等賞を逃したことです。最優等賞を取ったお酒と自分が造ったお酒の差を知り、涙が出るほど悔しくて。
そこで自分の甘えを捨てようと、その日に原田社長に「私を杜氏にして下さい!」と直談判したんです。

― 山口県の女性杜氏は阿部さんで4人目ですね。

― 県内の女性杜氏たちの存在も私の背中を押してくれました。「彼女達ができるなら私もできるはずだ!」と勇気をもらえたんです。

ただ杜氏になると負担も大きくなるため、夫にはなかなか言えませんでした。だから夫が事実を知ったのは新聞記事だったんですよ。とても驚いてましたが、私の想いを理解してくれ、子育ても頑張ってくれているので本当に助かっています。

■女性スタッフが多数活躍、女性目線のお酒も開発

― 阿部さんの他にも、女性が何人も働いていますよね?

― 妊娠や出産、家庭の事情にも柔軟に対応してくれるので働きやすいんですよ。
製造部の女性は妊娠後、体への負担の少ない事務職に異動になるなど、女性にとても優しい職場ですね。

ー 女性社員が中心となって新商品の開発もしていると聞いています。

ー 微発泡の日本酒「末摘花」(すえつむはな) ですね。低アルコールなので飲みやすく女性好みの甘酸っぱい味わいに仕上げました。

■一年中お酒を造り続ける“四季醸造”への想い

― 酒造りは冬に行なうのが一般的ですが、はつもみぢでは四季醸造に取り組んでいますね。

ー 夏はエアコンを使っても温度や品質の管理が大変なのが難点ですね。
でも出来たてで最高の状態のお酒をいつでも飲んでもらえるのは四季醸造ならではです。
とてもやりがいがあるんですよ!

― ありがとうございます!それでは最後に、中国の方に向けてメッセージをお願いします。

― 実は私は日本酒を殆ど飲んでいなかったのですが、私の日本酒への悪いイメージを一変させたのが「原田」だったんです。あまりの美味しさに感激し、今こうして酒造りに邁進しています。
中国の皆さんも、是非うちのお酒を色々と飲んで欲しいですね。
お気に入りがきっと見つかりますよ!

【取材を終えて】

阿部美恵さんとはこのインタビューで初めてお会いしましたが、明るい笑顔であっという間に緊張をほぐしてくれました。
「酒造りは子育てと同じ」とおっしゃる阿部さん。息子さんを育てながら、一年中清酒を育てています。子育ての経験がきっと酒造りにもすごく役立っているのでは、と感じました。
小学生の息子さんが成人した暁には、ご自分で醸した日本酒で乾杯したいとのこと。
努力家の阿部さんなので、その頃には、きっと今よりもさらにさらに美味しい”最高の一杯”でお祝いできるのではないでしょうか。

<中国語版公開日>2023年8月
<記事制作>美酒企画代表取締役 柴田亜矢子